

NPO 法人滋賀・まいばら空き家対策会 理事長の法雲 俊邑(のりくも しゅんゆう)さんは情報工学の専門家で、長年にわたり大学で教鞭をとっていました。
住まいのある米原市甲賀(旧伊吹町)では住職をつとめ、「東草野まちづくり懇話会」(4集落の会)を立ち上げリーダー的な存在です。早くから空き家課題に取り組んできました。

「人口減少による過疎化です。私が生まれ育った東草野地域は、伊吹山の北西麓で姉川上流の谷間に形成された山村です。多くの人が村から出ていき、空き家が増え、人口が減少…。このままでは私が住む甲賀の村自体が消滅する危機を感じたことがきっかけとなりました。」
最寄り駅 JR 近江長岡から車で20分、スーパーなどの買い物なら15分程度の距離。新幹線や高速も30〜40分あれば利用できます。山間部でありながら比較的便利です。
しかしながら、豪雪地域であるのも事実。10年に1度は、2メートルの積雪になることもあります。もちろん、大きな道は除雪・融雪の機能が整っています。
「東草野地域は、米原市の中で人口減少率の高い地域です。私も平成6年より実家へ戻り、勤務する大学まで通っていました。」と法雲さん。
法雲さんは、湖北地域の過疎化対策のボランティア団体をつくり、長浜に「湖北移住交流センター」を設立。県の委託を受け、空き家対策や都市からの移住活動を担ってきました(令和3年より長浜市の機構に吸収合併)。
米原市の空き家対策については、平成25年より関わり「空き家対策研究会」を立ち上げ、現在の NPO 法人滋賀・まいばら空き家対策会へと引き継がれています。

「まず、移住者の情報を収集しました。各集落へは直接出向き、役員さんへ制度の説明、空き家の登録(売却・賃貸)を依頼しました。地域おこし協力隊などの力も借りながら床を張り替え、水まわりも直し、移住者がすぐに住める環境に整え改修していきました。」
「最初は、やはり資金不足が大きな課題でした。滋賀県の「山の健康・もりの恵」や「平和堂夏原財団」の支援を3年ずつ頂いて、古民家改修の一助にしました。地元の事業所や商店など、人手不足や後継者がいないところへは、移住者が跡継ぎになってもらえるような紹介活動もしていきました。」
補助金では改修費用も賄えず、5軒ほどの改修には古い家ほど、法雲さんの負担が増加することもしばしば…。
行政からの補助金はあるものの限りがあります。しかし、誰も手をつけなければポツンと1軒家になる。村がなくなる。そんな姿を見たくない気持ちでいっぱいだったのです。
法雲さんは広い視野で地域の高齢化・過疎化に立ち向かいます。
東京や大阪で開催される移住フェスの参加や、限界集落は川の上流に位置しているところが多いことに着目すると「全国水源の里連絡協議会」に参加。京都府綾部市など全国で同じような課題に悩む地域の取り組みを学びます。
「地域に目玉をつくろうと考え奮闘しました。全国水源の里シンポジウムでの発表や自伐型林業を試みたり、水力発電の調査をしたりと、さまざまなことをしました。」
法雲さんの地道な活動が実を結び、姉川ダムの下流にある水力発電用の曲谷ダムの建設、奥伊吹水力発電所へとつながりを見せていきました。
2025年現在、甲賀集落の全戸数は20軒。
法雲さんは空き家が社会問題化する前から住まなくなった家を買い取り、改修を進め、今では6軒の移住者がいます。

「地域に関心をもってもらうための活動を定期的に行っています。年に一度、村での交流会やそば打ち体験、山では天然のマツタケがとれるので組ごとに入札会を行います。村の清掃活動や寺社の行事にも参加してもらい、孤立することなく地域で移住者を支えます。」
「甲賀はその昔、林業が盛んでした。炭焼きで生計を立て国友鉄砲に炭を納めていた歴史もあります。薪割りや炭焼きの窯を使った炭焼き体験などのイベントを通じて、この地の文化や山村ならではの魅力を伝えています。」
「空き家対策研究会を設立した当初の課題は資金面でした。国や県にはたらきかけ、少しずつですが取り巻く環境は明るくなりました。」
活動を通して地域住民の戸惑いも払拭され、「農地付き空き家の手引きの改訂」の後押しも受け、空き家がプラスの資産になるよう進めています。

平成27年より米原市から「空き家バンク事業」の委託を受けて10年がたちました。
「空き家対策研究会」は「滋賀・まいばら空き家対策会」として、任意団体から NPO 法人となりました。補助金なども受けスタッフも増やすことができ、法雲さんは次なるステージへと目を向けます。
「登録者は増えています。しかし、私たちの登録空き家は築年数が高いものです。住めるものもあれば、そうでないものもあります。ある一定の基準を決めて、登録できる物件とできないものの仕分けをしていきたいと考えています。」
「また、大工も出来るスタッフを抱え、現場へ出向いて、建物の材質や年数、改修費の試算やサポートなど、一貫して関われるような存在になればとも思っています。」
今、温めている企画についてもおたずねしました。
「今の課題としては、若い人が少ない。若い世代が家族で楽しんで住めるような目玉があればと思っています。古民家とはいえないが、仮に住んでもらえる施設をつくり、おためし居住をしてもらい、空き家だけでなく滋賀の良さを知ってもらえるような、そんなまちづくりを考えています。」
「空き家や移住で思っていることや考えていることがあれば、ぜひ、NPO 法人滋賀・まいばら空き家対策会に来てください。どんなことでも結構、なんでも相談に応じます。移住された人たちが、風光明媚な自然環境の中での生活を楽しまれ、また、村の活力となって後継者になってくださることを願っています。」